事業目的
【1.事業の背景】・・・人口減少社会とアジアの成長の中で求められる地域の国際化を担う人材育成
静岡県は、製造業出荷額、就業者数で全国3位(平成18年「工業統計調査」)、一人当たり県民所得で全国3位(平成17年度最新推計値)、工場立地件数では全国第1位(平成19年「工業立地動向調査」速報値)などの指標にみられるように、製造業を中心としつつ、農林水産業、商業、観光産業などバランスのとれた全国有数の経済県である。
しかし、静岡県の地域社会や日本の持続的発展を展望するとき、「人口減少社会」の進行は、巨大なマイナストレンドとして、夕張市に象徴される地域社会の崩壊の広がりを予想せざるを得ない。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によれば、今年から46年後の2055年の日本の総人口は8,993万人となり、2005年から3,844万人、30.1%の減少となる(2006年12月公表、出生率1.26で推移した中位推計値)。
問題は2055年に近づくにつれて加速する減少率である。この減少には大きな地域格差が伴うことも想定される。左の表は、上記研究所の都道府県別将来推計人口が2035年までしか推計されていないことを踏まえて、都道府県別に2050年まで行った人口予測値である。41年後の2050年には、都道府県人口が40~50%台になる県が16県、60%台となる県を合わせると、全国の7割の33道府県に上るとの推計結果が出ている。
「人口減少社会」の進行と少子高齢化は、需要面においては消費市場の縮小を起点とする国内市場の巨大な縮小圧力となるとともに、供給面では生産年齢人口(15~64歳)の減少に伴う労働力人口の縮小を招き、日本の経済社会、地域社会にとって、大きなマイナス要因となる。
他方で、日本と地域社会は、大きなプラスのトレンドをもつ可能性を秘めている。それは、日本が急成長するアジア諸国の中に位置する国として、地域の産業・企業が、市場を海外に求め、アジアを始めとする国際経営戦略をもつかどうか、それを担う人材が確保できるかどうか、に左右される。
【2.事業の目的】・・・静岡の国公私立大学の連携で開発する新しい 大学院教育プログラム
地域経済の国際化とそれを担う人材育成、広がる格差社会や高齢化など難題を効率的な行政運営によって解決することは、避けて通れない地域の戦略的な重要課題となりつつある。
次の図は、アジアにおける静岡県内企業の海外における事業所進出の状況を示すものである。

他方、平成17年には、県内への外資系企業立地件数は全国1位であり(次図表、参照)、外国人居住者の増大に見られる地域社会の国際化とともに、静岡県経済の国際化は急速に進展している。

上記のような状況の下で、静岡県のこれからの地域経済と地域社会の持続的発展を展望するとき、静岡県の長期経済戦略は、人口減少・少子高齢化のなかでアジアの活力を取り込み、「これからはアジアとの交流を担う人材がどれだけ育てられるかが地域や企業の浮沈を握ることになる。」(「静岡新聞」平成20年1月4日社説)との認識が、静岡県内でも広がりつつある。
静岡大学と静岡県立大学は、県内私学の協力を得て、これからの静岡県の地域経済・地域社会を担う高度な専門能力をもつ職業人育成を目的とする共同大学院の設置を目指すことで合意し(平成20年1月24日県庁で両大学長の発表)、今後、教育プログラムの開発を進める計画である。
【3.2つの分野を柱に】・・・留学生を含め「国際経営」と「公共経営」の2分野で高度職業人の育成を
すでに経済・経営分野の大学院(修士課程)を設置し、大学院レベルでの人材育成に実績をもつ静岡大学と静岡県立大学を中核に、静岡産業大学はじめ県内私学の教員資源、企業や行政の実務家を集結・活用し、地域社会の発展を担う公共分野の人材育成(公務員、NGOやNPOなどの地域社会・文化の担い手)と、「留学生30万人計画」に対応した多数の留学生を含む県内企業・産業の国際展開を担う、高度な専門能力をもつ人材育成教育プログラム開発を次図の2分野で目指している。

公共分野における人材育成の目標は、①急速に進展する人口減少と少子高齢化にともなう地域社会の変容、戦略的重要性をもつ地域社会の国際化の実態を理解し、その上で、地域社会と地域経済の持続的発展のために必要な政策を総合的に企画立案する能力を修得すること、かつ、②これからの地域社会の課題に対して、ひっ迫する自治体財政の制約の下で、住民満足度を重視し、効率的な経営マインドをもって行政運営にあたる新公共経営(New Public Management:NPM)と公共会計等の専門的知識をもってあたる能力を持つ人材育成を養成することである。後者は、国際的経営分野の教育内容とも関連をもつ。
また、国際経営分野では、県内企業の国際展開に必要な人材として、アジアの活力を取り組むという観点からアジアからの留学生に注目している。①アジア出身国の言語とともに英語と日本語に習熟し、②経済・経営の専門知識能力の習得、③日本の企業文化や経営思想、及び公共分野とも関連する「法令遵守:コンプライアンス」や「企業倫理と企業の社会的責任:CSR」などの精神を身に着けた人材の育成と活用は、これからの静岡県企業の国際展開にとって欠くことはできない。
「留学生30万人計画」は、教育再生懇談会でも具体化が検討され、本年5月16日の合宿懇談会でも、日本で学ぶ留学生の半数が卒業後に日本で就職できる支援体制づくりを6月にまとめる報告書に盛り込むなど、政府の高等教育の重点課題になっている(本年5月17日報道)。海外入試を含む国内外の優秀な留学生の確保、県内企業・産業への就職などは、県内産業界や行政との緊密な連携と支援なくしては難しい。本事業では、県内産業界のニーズを的確に把握しつつ、ニーズをカリキュラムに反映し、優秀な留学生の獲得と活躍の場を具体化する計画である。
本事業は、このような地域の課題の取り組みは、1大学では困難であることから、静岡大学と静岡県立大学による「共同大学院」設置を視野に入れつつ、静岡産業大学他の県内私立大学の教員資源の活用と行政や企業の実務家・専門家との連携によりはじめて構築できる、新しい高等教育プログラムの開発を行うものである。


